小細胞肺ガン患ってます。

発症から8年目、只今人生漂流中 ^^

癌ゲノム医療ってなんだ

 

ゲノムとは、遺伝子とは?

 

1)ゲノムとは
ゲノムとは、遺伝子をはじめとした遺伝情報の全体を意味します。
私たちの体は、約37兆個もの細胞からなっています。細胞の中には「核」と呼ばれる大切な部分があり、その中に遺伝子を乗せた「染色体」が入っています。ゲノムとは、染色体に含まれるすべての遺伝子と遺伝情報のことです。
染色体を構成する重要な成分が「DNA」で、DNAは4種類の「塩基」と呼ばれる分子のブロックが一列に並んでできている長い分子です。この4種類の塩基の並び(「配列」といいます)が、単語や文章のように決められた意味をもっていて、私たちの「遺伝子」の情報(遺伝情報)を構成しています。

 

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2)遺伝子とは
遺伝子は体をつくるための情報をもつ物質の一部(遺伝子領域)です。たくさんの遺伝子があり、それぞれ遺伝子の機能は異なります。
遺伝子は、染色体の一部です。1人のゲノムには約2万~3万個の遺伝子が含まれているといわれており、遺伝子ごとに、体をつくるためのさまざまな機能があります。

人のゲノムは31億もの塩基配列からなりますが、一部の塩基配列が異なること(遺伝子多型)で、一人一人の個性が生まれます。これにより外見や性格、病気のなりやすさ、薬の効き方、副作用などが人によって違ってくると考えられています。

こういった塩基配列の違いは、「生殖細胞精子卵子)」を介して親から子に伝わります。一方、環境や生活習慣や加齢などによって体細胞(体をつくる細胞)の一部に塩基配列の違いが起こることもあります。
3)がんとゲノム・遺伝子
がんは、ゲノムの変化(変異)によって起こる病気です。
がんは、ゲノムの変化(変異)に伴って塩基配列の違いが生じ、遺伝子が正常に機能しなくなった結果、起こる病気です。

ほとんどのがんは、喫煙や生活習慣、加齢などが原因となり、正常な細胞の特定の「体細胞」の遺伝子が後天的に変異することによって、がん細胞が発生します。がんが進行していく際には、がん細胞においてのみこの遺伝子変異が、進行・増殖のもととなると考えられています。このようながん細胞にだけ起きた遺伝子変異は、次の世代に遺伝するものではありません。

一方で、原則的に生涯変化しない、生まれもった「生殖細胞」の遺伝子変異が主な原因となって発病するがんもあります。これらは、がんの中では珍しく、親から子へ遺伝する可能性がある遺伝性腫瘍(家族性腫瘍)といいます。

 

がんゲノム医療

ほとんどのがんは、遺伝により発生するものではありませんが、生まれもった遺伝子の個人差が主な原因となって発病する遺伝性腫瘍(家族性腫瘍ともいいます)もあります。

がんゲノム医療は、遺伝子情報に基づくがんの個別化治療の1つです。
がんゲノム医療とは、主にがんの組織を用いて、多数の遺伝子を同時に調べ(がん遺伝子パネル検査)、遺伝子変異を明らかにすることにより、一人一人の体質や病状に合わせて治療などを行う医療です。現在、実施するための体制づくりが進められています。

一部のがんの治療では、すでに標準治療として、がんの組織などを用いて1つまたはいくつかの遺伝子を調べる「がん遺伝子検査」を行い、遺伝子に合う薬が使われています。しかし、「がん対策推進基本計画(第3期)」の「ゲノム医療」の定義に基づいて解釈すると、がん遺伝子検査はがんゲノム医療に含まれません。

 

がんゲノム検査が行われる場合

がんゲノム医療は、標準治療がないまたは終了しているなどの条件を満たす場合に行われます。
「がんゲノム医療」として、多数の遺伝子を同時に調べる検査である「がん遺伝子パネル検査」は、標準治療がないまたは終了したなどの条件を満たす場合に行われるようになってきています。

 

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がん遺伝子パネル検査

1)がん遺伝子パネル検査とは
がん遺伝子パネル検査は、合う薬があるかどうかを調べる検査です。
がん遺伝子パネル検査は、生検や手術などで採取されたがんの組織を用いて、高速で大量のゲノムの情報を読み取る「次世代シークエンサー」という解析装置で、1回の検査で多数(数十~数百)の遺伝子を同時に調べます。
遺伝子変異が見つかり、その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などでその薬の使用を検討します。

2019年7月現在、一部が保険診療や先進医療で行われており、研究開発も活発にすすめられています。
2)検査の流れ
がん遺伝子パネル検査では、一度に多くの遺伝子を調べます。

例えば、ある特定の遺伝子変異があった場合には、解析結果について複数の専門家で構成される委員会によって検討されます。担当医はこれを診断や治療の参考にして、遺伝子変異に効果が期待できる薬があるかどうか検討を行います。
効果が期待できる薬がある場合には、臨床試験などを含めてその薬の使用を検討します効果が期待できる薬がない場合には、ほかの治療を検討します。

がん遺伝子パネル検査を実施しても遺伝子変異がなかった場合には、ほかの治療を検討します。

3)検査の対象となる人や状態
がん遺伝子パネル検査は、誰でも受けられるわけではありません。
現在(2019年7月)、がん遺伝子パネル検査は誰でも受けられるわけではありません。一般的には、①標準治療がない固形がん、②局所進行もしくは転移があり、標準治療が終了した(終了見込みを含む)固形がんの人で、次の新たな薬物療法を希望する場合に検討します。また、全身状態などの条件もあります。
4)検査結果に基づく治療
がん遺伝子パネル検査を受けても必ず治療法が見つかるわけではありません。
がん遺伝子パネル検査の前には、あらかじめ以下についても知っておくことが大切です。

がん遺伝子パネル検査で期待できること
がん遺伝子パネル検査を行って遺伝子変異が見つかった場合は、その遺伝子変異に対応した薬があれば、臨床試験などでその薬を使用することを検討できます。また、新たな治療法の開発などにつながる可能性があります。

 

がん遺伝子パネル検査の限界

検査の結果、遺伝子変異が見つからない場合もあります。がんの種類にもよりますが、治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異が見つかるのは全体の約半数の患者さんです。しかし、遺伝子変異があっても、使用できる薬がない場合もあり、がん遺伝子パネル検査を受けて、自分のがんに合う薬の使用(臨床試験を含む)に結びつく人は全体の10%程度といわれています。
がん遺伝子パネル検査では、多くの遺伝子を調べるため、本来目的とする個別化治療とは別に、がんになりやすい遺伝子をもっているかがわかる場合があり、これを二次的所見といいます。この場合、将来の健康に対する不安が生じる可能性があります。もちろん、もともと調べたいがんのこと以外(遺伝性のがんなど)は、たとえ見つかったとしても結果を聞かなくても構いません。結果を聞く場合にも、十分な理解ができるように、国は病院の体制を整備しています。
以前に手術などで摘出したがんの組織を使用する場合もありますが、新たに組織を採取するために生検を行う場合は、生検に伴って体に負担が生じる可能性があります。

 

             (国立がん研究センター がん情報サービスより)

まとめ

日本のがん治療が大きな転換点を迎えております。これまで、限定的な枠組みで進められてきた「がんゲノム医療」に、2019年6月から公的な医療保険が適用されることになりました。より多くの患者が受けられる医療として本格的に始まります。
がんゲノム医療とは、患者一人一人のがん細胞の遺伝情報、つまりゲノムを詳しく調べて、効果のある薬を効率よく見つけ出し治療に結び付けようというものです。手術や抗がん剤の投与など標準的な治療を行っても容体がよくならない患者に、治療に向けた新たな道ができることにはなりますが、その一方で、効果が期待される薬による治療が開始できるケースは10%から20%にとどまるとみられていて、課題も少なくありません。

がんゲノム医療は、今後のがんの治療を、大きく変えることになると考えられます。これまでは救えなかったがん患者の新たな治療法に結びつけるために、医療現場も態勢整備が急務になっている様です。
2人に1人ががんになるこの時代、新たな医療に期待は高まります。